対談〜こうしてビジネスが生まれた〜

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時流を読む経営者とクリエイター集団がタッグを組み、最先端のヴァーチャル美術館を開設。

時流を読む経営者とクリエイター集団がタッグを組み、最先端のヴァーチャル美術館を開設。

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メンバー Member

株式会社麗人社
代表取締役社長 野口 和男

1993年の創業以来、世界14カ国での展覧会運営や美術出版、企画画廊の運営などアート普及に関する幅広い事業を展開。フランスとスペインで海外支局の開設やヴァーチャル美術館「Gates」を開館するなど、旧来のアート業界に一石を投じる革新的な取り組みが注目を浴びている。

株式会社アートマネージメント
代表取締役 金崎 亮太

AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、映像、音楽を使ったメディアアート制作やデザイン/クリエイティブ事業を展開。ご自身も電子音響音楽家としても活動を行う。

――2社の出会いについて教えてください。

野口社長 当社は約30年にわたる美術出版事業のほか、銀座や日本橋でのコマーシャルギャラリー経営、そして、ヨーロッパやアジアを中心に世界各国で日本のアートを紹介する展覧会を開催してきました。しかし、2020年2月から始まったコロナ禍の影響でメイン事業の一つでもある海外事業が完全にストップしてしまったんです。それを機に、以前から構想があったヴァーチャル美術館の開設に着手することにしました。その際、パズルさんに相談したところ、アートマネージメントの金崎さんをご紹介いただいたんです。

――野口社長が構想されたヴァーチャル美術館とはどのようなものだったのですか?

野口社長 簡単に言えば、インターネット上にVR技術を使って展示室を再現した仮想空間美術館のこと。スマホやPCなどデバイスがあれば、世界中のどこからでも簡単に仮想空間にアクセスでき、画面を動かしながら作品が鑑賞できるというものです。それに加えて、気に入った作品があれば購入可能なアートストア機能や、あらゆるアート関連の文字情報や画像、動画コンテンツを紹介するメディアセンターなどを有する、アートの複合施設をイメージしていました。

ヴァーチャル美術館の必要性はコロナ禍だから、というだけではないんですよ。石油を原材料とする梱包資材や輸送燃料の削減、遠方への外出が困難な方への配慮、SDGsへの取り組みとしてITを活用するなど、世界的にCO2削減や低・脱炭素社会への動きが高まっている今の時代にマッチした新しい形の美術館になるとも考えたんです。

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――なかなか壮大なプロジェクトですね!金崎代表は野口社長からその話を聞かれた時、どう感じられたのですか?

金崎代表 当社の事業の一つ「メディアアート事業」は、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、サウンドインスタレーション、プロジェクションマッピングなどを活用したメディアアート作品の制作を行なっています。これまでも様々なプロジェクトに関わってきましたが、これほどアートに直結した仕事が来るとは思っていなかったので驚きはありました。でも、同時に「この仕事はぜひやりたい!」と思い、お引き受けさせていただきました。

それに加えて、野口社長の対応の早さにも驚かされました。お話をいただいたのがちょうど2020年のGW頃だったはず。まだ世の中はコロナ禍の対応で右往左往している時に次のことを見据えて動き出しているんですからね。

野口社長 あの時は弊社もリモートワークになっていて、「このままじゃダメや。何かせなあかん!」って気持ちやったしね(笑)。

金崎代表 早速話がまとまったことで、僕もCGクリエイターやエンジニアなどに声をかけ、チームを組んで進め始めたものの、当初は手探り状態でした。なにせ前例のないプロジェクトだったので。ヴァーチャル美術館と呼ばれているものは、他でもすでにありましたが、よくあるのが360度カメラを使用した空間撮影の実写映像というもの。けれど、麗人社さんが手がけようとしているのは、作品の実写真とCGを組み合わせて展示室の更新が可能な、まさに展覧会そのままのスタイルで鑑賞するという画期的なものでしたからね。例えば、WEBサイトやECサイトであれば「こんな参考例がありますよ」とご提示できるんですが、そういうのが全くない状況だったので、そこが難しかったですね。

野口社長 僕の頭の中にあるイメージや金崎さんの中のイメージ、他のクリエイターさんのイメージを擦り合わせて、一つにまとめていく作業が割と難しかったね。

金崎代表 操作方法もVRのゴーグルをつけて鑑賞するスタイルとか、ゲームのようにコントローラーを使うといった案も当初はありましたよね。「アバターで動かす?あんまりかっこよくないからやめとこ」とか(笑)。紆余曲折がありながらも試行錯誤して今の形に行き着いたんです。

――前例がないものを2社が手を取り合って創り出していったんですね。お話を聞いていると、スタート時からお二人が意気投合されて仕事に取り組まれた様子が伝わってきます。

野口社長 金崎さんをはじめ、関わっているクリエイターの人たちが楽しい人が多かったから。打ち合わせ中も笑いが絶えなかったんですよ。

金崎代表 野口社長もレスポンスが早い上にフランクに話ができるので、僕らも楽しく仕事をさせていただきました。実際、ご依頼があった仕事はハードルが高いものでしたが、「今までにない新しいものを作っているんだ」という感覚をみんな持っていたので、困難ながらも気持ちが切れずに進められたと思います。こんな機会をいただけて本当に光栄でした。

野口代表 僕たちもワクワク感がありましたね。社員全員がプロジェクトの完成をずっと楽しみにしていましたから。

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――そして、始動から約1年後の2021年7月に「The Virtual Art City Gates(ゲイツ)」が公開になった時の反響はどうでしたか?

野口社長 かなり大きい反応がありましたね!「今までになかったヴァーチャルなアート空間」だと多方面から賞賛されましたし、同業者や作家の方からも期待の声や協業したいという声が寄せられました。特に360度カメラではなく、実画像とCGを組み合わせることで展示替えができる点が画期的だったんでしょう。しかも、操作ひとつで過去の展示会場にすぐ入れ替えることもできるんです。Gates(ゲイツ)の開設以降、他にもヴァーチャル美術館は立ち上がっていますが、これは他のどこも真似できていません。

金崎代表 あと、細かい工夫でいえば、作品の大きさや展示する高さをどう定めるか、1つの壁に何点ぐらい作品を展示できるのかといった点も考慮しました。5つある展示室は各1,000平方メートルあって、実際の作品のサイズで展示すると豆粒みたいになってしまうので(笑)、4倍にしたりとサイズ感も悩んだ点です。リアルさを追求するとユーザビリティが落ちる可能性もあるので、リアルとリアリティのせめぎ合いというか、その点を大事にしました。

野口社長 今は1室に60点飾れるけれど、その点もかなり工夫してくれましたよね。高解像度の画像を読み込む時にそのスピードがあまりに遅いと「こんなに時間がかかるなら、もうええわ!」と脱落する人も多いじゃないですか(笑)。最低限のスピードで表示できるところも金崎さんチームが尽力してくださった部分なんです。

――今後は「The Virtual Art City Gates(ゲイツ)」をどのように展開されるのですか?

野口社長 コロナ禍も落ち着き人流が戻ったことから、以前のように展覧会を開催することができるようになり、東京のギャラリーにも足を運んでくださる人がコロナ禍前のように増えてきました。そうすると、やはりアート作品を見るならリアルなものでないと、という声が出てくる一方で、私はヴァーチャルでしか体験できないこともあると思っていて、これからの時代はどちらも必要になるだろうと思っています。その上でGatesだからこそできることを思案中です。

金崎代表 例えば、立体の彫刻作品をヴァーチャル空間に展示するとか、先端技術が進化することで必ず次のフェーズに進みますよね。

野口社長 おっしゃる通りで、ヴァーチャルだから実現できることがこの先多様にあると思うんです。今後はその可能性を広げながら、展覧会やギャラリー運営といったリアルとヴァーチャルとの両輪で、社会と美術界の架け橋となる事業に取り組んでいきたいと思っています。

金崎代表 技術は日々進化しているので、変わる日もそう遠くはありませんからね。野口社長が今後どんな展開を考えていて、どんなお仕事が一緒にできるのか今から楽しみです。

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――今後の両社の展開がますます楽しみですね。その上で、関西活性化プロジェクトの良さや、加入した感想などを聞かせてください。

野口社長 私は関西活性化プロジェクト立ち上げの初期から参加していますが、こうやって何かあれば助けていただいています。ビジネスに限らず相談にも乗っていただいていて、頼りになる存在ですね。

金崎代表 野口さんをはじめ、いろんな方たちと出会える貴重な機会だと思っています。僕の会社は少人数のため、なかなか自分たちで営業をする時間がないので、こうやってご紹介いただいて仕事に繋がるのは本当にありがたいです。

――どのような会社に、関西活性化プロジェクトをオススメしたいですか?

野口社長 パズルさんはセミナーなども頻繁に開催されているんですよ。様々な業種の方たちが参加されているので、面白い出会いも多いと思いますね。その中でも当社のようなアート関連のメンバーが今は少ないので、クリエイティブ系の方たちにもぜひ参加していただきたいですね。情報共有は確実に業界発展に繋がりますから。

金崎代表 僕らのような小規模でされている会社など、横の繋がりを求めていらっしゃるところには最適だと思います。今回のプロジェクトを進める際、必要な知識を得るには海外のサイトやYouTubeを調べるしかなかったんですね。より最適解が得られる環境を構築するためには、もっと横の繋がりを持って、例えばLINEで気軽に聞ける人脈を増やす必要があるね、なんて話をしていたんです。そうしたら、ちょうどパズルさんが同じような仕事をされている方たちとの集まりをセッティングしてくださるなど、出会いの場を創出してくださるのも魅力だと思います。普段なら出会わない人たちとも出会えるという、横の繋がりが広がるおもしろさを実感してほしいですね。

野口社長 関西活性化プロジェクトは今では150社以上の企業が参加していると伺っています。これだけの企業を束ねているのであれば、例えば2025年の大阪万博に向けて、みんなで文化力を高める何かをやるとか、そんな動きがあってもおもしろいんじゃないかな。なかなか1社では参加できないけれど、みんなで集まって関西パワーを打ち出していきたいですね。2003年に故・河合隼雄文化長官が提唱した「関西元気文化圏」は、今なお文化庁が推進していますから、僕たち関西の経営者には、その使命もあると思いますよ。

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