対談〜こうしてビジネスが生まれた〜

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長年の課題だった障害者雇用。企業同士のつながりから生まれた出会いが、採用への意識を変えた

長年の課題だった障害者雇用。企業同士のつながりから生まれた出会いが、採用への意識を変えた

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メンバー Member

株式会社エタンセル
代表取締役 冨永 成慈

2004年設立。医療・介護業界を中心とした人材派遣・人材紹介サービスを軸に、介護保険の請求事務代行や人材コンサルティング、研修、ICT支援など幅広いサービスを展開する。中でも同社が運営する介護士・看護師のお仕事探しサイト「カイゴカンゴ」は、20年以上にわたり医療・介護業界で培ってきたネットワークとノウハウが生かされている。介護・医療の現場が抱える人材確保や業務運営の課題を多角的にサポートしている。

障害者ドットコム株式会社
代表取締役 川田 祐一

障害のある方の「働く」「暮らす」「育む」を支える事業を展開。放課後等デイサービスや就労継続支援事業所、相談支援事業所など、全国40,000件以上の障害福祉サービス事業所を掲載する検索サイト「障害者ドットコム」を運営し、一人ひとりの希望条件に合った事業所探しを支援している。障害福祉サービスの事業所が増える一方、情報発信が十分でなく、利用者が必要な情報を得にくいという情報格差の解消を目指し、利用者と事業所をつなぐ情報サービスを提供するほか、計画相談支援・就労継続支援B型の運営など、福祉事業にも取り組む。

――まずは二社が出会ったきっかけを教えてください。

冨永社長 当社は医療・介護業界に特化した人材派遣・職業紹介サービスを軸に、人材コンサルティングやICT事業など幅広い事業を展開しています。2004年の創業から事業を拡大する中で、障害者雇用は長年の課題のひとつでした。法律上、当社は障害者雇用が義務付けられているものの、「具体的にどういう人を雇えば良いのか」「どこに相談すれば良いのか」が全然わからなかったんです。関西活性化プロジェクトを運営するパズルさんに相談したところ、「冨永社長にぴったりの会社があるので、紹介しましょうか」と、障害者ドットコムさんをご紹介いただいたのが出会いのきっかけです。

川田社長 障害者ドットコムは、障害のある方の自立した生活を支えるため、就労支援や生活支援、相談サービスなどを展開しています。全国40,000件以上の障害福祉サービス事業所を検索できるWebサイト「障害者ドットコム」の運営もそのひとつです。2024年7月には大阪労働局から〈障害者雇用相談援助事業者〉の認定を受け、企業の障害者雇用を支援する取り組みも始めました。その頃、パズルさんから「障害者雇用を課題にしている企業が何社かある」と伺い、その中でご縁をいただいたのがエタンセルさんでした。

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――冨永社長は障害者ドットコムさんをご紹介されて、最初はどのように感じられましたか。

冨永社長 最初は「障害者雇用相談援助事業者という、障害者雇用を支援してくれる会社があるのか」というところからでした。

川田社長 今でこそ冨永社長もご存知ですが、障害者雇用相談援助事業は2024年に始まった比較的新しい制度なので、まだご存知ない方も多いんですよ。

冨永社長 ただ、最初から障害者雇用に前向きだったわけではないんです。正直に言うと、お会いするまで「実際に雇って大丈夫かな」という不安もありましたから。そんな中、川田社長は「御社に合いそうな方がいる支援機関も含めて探してみます」と言ってくださった。まず当社がどんな会社で、どんな事業をしているのかを理解した上で人を探そうとしてくれたので、「ちゃんと向き合ってくれる会社なんやな」と安心しました。また、障害者雇用相談援助事業者の認定を受けるにはハードルが高いと聞いていたので、それをきちんと取得されていることも安心材料になりましたね。

川田社長 障害者雇用は、とにかく採用を成立させれば良いというものではないですからね。会社によって仕事内容も職場環境も違いますし、その方の得意なことや必要な配慮も異なります。だからこそ、うちはまず企業のことをしっかり理解し、その方の特性や能力ときちんとマッチさせることを大切にしています。

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――そこから実際にどのような仕事をお願いするかは、どうやって決めていったのですか。

冨永社長 どんな業務をしてもらうのが良いのかもわからなかったので、まずは「うちはこんな会社です」と説明させてもらいました。すると川田社長から「それならICT事業部がマッチングしやすいんじゃないですか」と提案してもらったんです。

川田社長 エタンセルさんがICT事業をされていることは事前に調べていました。当社がつながっている就労移行支援事業所には、ITの訓練を受けたり、プログラマーを目指したりしている方もいますので、それならうまくマッチする可能性があると思ったんです。そこからICT事業部マネージャーの笹尾さんにつないでいただき、「具体的にどんな仕事ならお願いできるのか」を一緒に考えていきました。これは一般的に〈業務の切り出し〉と呼ばれる工程です。障害者雇用というと、まず「障害のある方を採用しなければ」と考えがちですが、その前に「自社にはどんな仕事があるのか」「その中で、その方の特性や能力を活かせる仕事は何か」を整理することが大切なんです。今回もここにはかなり時間をかけました。

笹尾氏 ICT事業部には大きく分けて、プログラムを開発するチームと、機器やネットワークを保守するチームがあります。川田社長と話していく中で、プログラム開発の仕事であれば障害があることが業務上大きなハンデにはならないとわかり、私自身も働いていただくイメージが持てるようになりました。その中でも合いそうだったのが「テスター」です。開発したシステムがきちんと動くかをテストしたり、不具合がないかをチェックしたりする仕事ですね。

冨永社長 僕らは最初、「障害のある方を雇いたい。でも、何をしてもらったら良いのか」というところから始まっていたものの、川田社長と話すうちに、「障害のある方だから何をしてもらうか」ではなく、「うちに必要な仕事に合う人は誰なのか」という考え方に変わっていきました。そこは大きかったですね。

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――川田社長からご説明があったとしても、実際に働いていただくとなると、やはり不安はありましたか。

冨永社長 最初はやっぱり不安でしたよ。「つないでもらったら終わり」「採用したら終わり」では意味がないですからね。雇用すること自体がゴールではなく、入社した後にきちんと定着してもらうことが大事だと思っていましたから。でも、川田社長が「こういう形で働いてもらえば定着につながるのではないか」と、かなり熱意を持っていろいろとご提案してくださって、不安がずいぶん解消されました。

川田社長 今回採用につながった方は少し体が弱く、ご家族も通勤を心配されていたんです。そこで、ご本人に合った働き方ができるよう、出勤とテレワークをどう組み合わせるか、通勤ラッシュを避けて出退勤できないかといった働き方に加え、トイレや勤務場所などの社内環境についても事前に確認しましたね。

冨永社長 当社ではもともと障害の有無に関わらず、家族の介護や育児など事情のある社員には時間差出勤を認めていました。ですから今回もその方に合わせて柔軟に対応しようという気持ちはありましたし、案外その点は無理なく進めることができました。その上で川田社長から具体的に提案してもらえたのはありがたかったですね。

川田社長 僕もエタンセルさんの一員になったつもりで一緒に考えて調整させていただきました。実際に会社に伺うと、社内の雰囲気も居心地もとても良いんですよね。「ここなら定着して働いてもらえそうだな」と感じたんです。

――採用された方は、現在はどのような仕事をされていますか。

笹尾氏 2025年10月から働いてもらって、もうすぐ1年になります。最初はテスターとして入ってもらったんですが、今は開発の補佐も担当するなど、成長に合わせて少しずつ仕事の幅を広げています。プログラミングの勉強にも熱心ですし、仕事にも前向きですね。私たちも見習うことが本当に多いんですよ。

冨永社長 実はその後、もう一人障害のある方を採用して、現在は二人がICT事業部で働いてくれています。社内でも障害があるかどうかを特に意識することはなく、若いスタッフが二人増えたという感覚です。これからさらに成長して、いずれは事業の中核を担ってほしいと期待しているんですよ。

川田社長 そうなんですね!二人目の方はどういう経緯で採用されたんですか?

冨永社長 普通に応募してきてくれた方が、たまたま障害者手帳を持っていたんです。でも一人目の採用を経験していたので、「障害があるかどうかは関係なく、当社に合う人であれば採用したい」と思えるようになっていました。ただ、もし障害者ドットコムさんに支援いただいて一人目の方を採用した経験がなかったら、二人目の採用をためらっていたかもしれません。一人目の方が実際に働いて活躍してくれたことで、障害者雇用に対するハードルが一気に下がったんです。

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――そうした障害者雇用を後押しする制度もあるのでしょうか。

川田社長 障害者雇用にまだ踏み出せていない企業の中には費用面を気にされているところもあると思うので、障害者雇用を支えるさまざまな制度があることはぜひ知っていただきたいです。例えば、一定の要件を満たせば〈特定求職者雇用開発助成金〉や〈障害者雇用調整金〉などを受けられる場合があります。障害者雇用に取り組む企業を支えるための制度ですから、条件に当てはまるものはぜひ活用していただきたいですね。ただ、何より大切なのは、採用することをゴールにするのではなく、その方が力を発揮できる仕事や働き方を一緒に考えていくことだと思っています。

冨永社長 まさにそうですね。雇う前は「本当に大丈夫かな」といろいろ考えましたけど、今振り返れば、ちょっと考えすぎていたなと思います。今はもう、「障害のある方を雇った」というより、「うちに合う社員との出会いをつくってもらった」という感覚に変わりましたし、採用して本当に良かったと思っています。

川田社長 そう思っていただけたことが僕らとしても一番うれしいですね。今回活用していただいた〈障害者雇用相談援助事業〉は、障害者雇用に取り組む企業を支援する制度で、企業は原則無料で利用できます。当社は企業と求職者をつなぐことだけを考えるのではなく、まずは企業のことを知り、「どんな仕事を任せるのか」「どんな働き方なら力を発揮できるのか」といったところから一緒に考えていきます。その上で、必要に応じて就労移行支援事業所などの支援機関との橋渡しをしています。障害者雇用というと、「自社で本当に受け入れられるだろうか」と不安に感じる企業も多いと思います。でも、最初から採用ありきで考えるのではなく、まずは「自社でどんな仕事をお願いできるだろうか」と相談していただくところから気軽に始めていただけるとうれしいですね。

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――両社にとって関西活性化プロジェクトはどのような存在ですか。

川田社長 今回のエタンセルさんとの件もそうですが、関西活性化プロジェクトでのご縁がなければ、こういうマッチングは生まれていなかったと思います。異業種交流会などでも名刺交換だけで終わってしまうことが多い。でも、関西活性化プロジェクトの場合は、それぞれの会社がどんな事業をしていて、どんな課題を抱えているのかをきちんと理解した上で、「それならこの会社とつないだら良いんじゃないか」と紹介していただけます。だから、その後の話もすごくスムーズに進むんですよね。

冨永社長 確かにその通りですね。

川田社長 毎月の勉強会などもあって僕も何度か参加しています。忘年会などで会員の方とは顔を合わせる機会もあるので、自然と顔の見える関係ができて、つながりも深まっていく。そこから企業同士のマッチングやお互いの課題解決につながる動きが生まれている、すごく良いコミュニティだと思います。

冨永社長 僕は8年くらい前に入会したのですが、きっかけはお世話になっている社長が先に会員になっていたことでした。「この会社が入っているなら信頼できるし、何かメリットがあるんだろうな」と思って(笑)。入会のハードルもそれほど高くなかったので、まずは試しに入ってみようと。企業をたくさん集めて、「あとは皆さん自由に交流してください」というところはいくらでもあると思うんですよ。でも、関西活性化プロジェクトは、一社一社のことをちゃんと把握した上で必要な相手をつないでくれる。今回の障害者雇用もまさにそうで、単に人と人をつなぐだけではなく、その先の課題解決まで考えてくれる。そこが他のコミュニティとは違うところですし、そこまでやってくれるところはなかなかないと思いますね。

――関西活性化プロジェクトをどのような企業に紹介したいですか。

川田社長 いろいろな課題を抱えていて、それを解決したいと思っている企業さんにはぜひ参加してほしいですね。ここにはさまざまな企業が集まっているので、自社だけでは解決できないことでも、企業同士がつながることで解決の糸口が見つかることがありますから。お互いの強みを生かして、お互いの課題を解決していく。そういうつながりをつくりながら、関西という地域全体を盛り上げていけるのも、このプロジェクトの良さだと思います。

冨永社長 経営者って何か困ったことがあっても気軽に相談できる相手がなかなかいないんですよね。でも、ここなら運営会社のパズルさんに相談すれば「それならこの会社、この人がいるよ」と、解決につながりそうな人を紹介してくれる。そうやって気軽に相談できる場を提供してくれるのが良いですね。

 

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